文学散歩~山の辺の道~
「カム」同人の芦原です。文芸ブログなので、それっぽく文学散歩などしてみました。奈良県S市には、著名人の筆によるたくさんの歌碑があります。今回は、山の辺の道コースの一部をご紹介します。
日本最古の神社として有名な大神神社から、山の辺の道を金屋方面に進むと、山道にひっそりと、小林秀雄による「山邊道」という碑があります。 これは、「毛筆は絶対執らない」と言う小林氏を、S市観光課長が口説き落として書いてもらったそうです。こんなに知的で凛とした文字なのに、なぜ毛筆で書きたくなかったのでしょう?
そのすぐ近く、磯城瑞籬宮跡・県主神社境内にある歌碑は、山口誓子によるもの。
磯城島の日本(やまと)の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ (万葉集 巻13 3249) (日本の国に、私の想い人が二人いると考えるなら嘆くこともないけれど、愛しい人はたった一人ですから、悩みも多いことです)
足を延ばして、日本最古の市と言われる海石榴市(つばいち)跡へ。村道沿いの民家に混じって、今東光による歌碑を発見。
紫は灰指すものぞ海石榴市の八十(やそ)のちまたに逢へる子や誰
(万葉集巻12 3101)
(美しい紫色を出すにはツバキの灰のあくを使うが、そのツバキの名をもつ海石榴市で出逢った貴女は、何という名前ですか。貴女とお付き合いしたい)
これは、歌垣(今でいう合コン?)の歌です。当時の女性は、夫と決めた男性にしか名を明かさないものだったので、名を聞く=求婚なわけです。天台宗僧侶にして、型破りな小説家でもある今氏がこの歌を選ばれたというのが、さもありなんという感じです。(氏の『毒舌・身上相談』は、まさに痛快! お薦めです)
少し違う場所になりますが、S市の芝公園には、川端康成の筆による歌碑があります。
三輪山をしかも隠すか雲だにもこころあらなむ隠さふべしや
(万葉集巻1 18 額田王)
氏に碑面を書いてもらう約束をしていたのに、果たされないまま亡くなられたので、楽焼に染書きした壷の文字を原形として歌碑を刻んだそうです。美しい三輪山をバックに、歌碑はS市市民に愛されています。
春が来て暖かくなったことですし、時には身の周りのブンガクを訪ね歩くのも、楽しいのではないのでしょうか。
注意:短歌の現代語訳は、芦原の独断と偏見による意訳です。
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